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糖尿病療養指導コース 第4回
薬物療法

[2021.10.11]

糖尿病の治療は食事療法と運動療法が基本です。
しかし、血糖コントロールがうまくいかない患者さんには、食事療法と運動療法と合わせて薬物療法が必要となります。高血糖の原因と血糖変動に合わせて薬を選択し、定められた方法をしっかり守る事が大切です。
必要に応じて薬を使うことにより、血糖コントロールがうまくできるようになります。

 

経口血糖降下薬

糖尿病の経口血糖降下薬には

  1. インスリンの効きを良くするタイプの薬(インスリン抵抗性改善系)
  2. インスリンの分泌を促すタイプの薬(インスリン分泌促進系)
  3. 膵臓を刺激し、ブドウ糖の吸収と排泄を調整するタイプの薬(糖吸収・排泄調整系)

があります。この3種類の働きを持った経口血糖降下剤とインスリンなどの注射薬を患者さんの個々の状態に合わせて薬を選択し、治療をしていくのが現在の糖尿病治療の基本です。

注射にはインスリンとリスキミア受容体作動薬があります。

 

2型糖尿病の病態と経口血糖降下薬の位置づけ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

内服薬が作用する部位

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれの特徴と内服薬の適応条件

 

インスリン抵抗性改善薬(チアゾリジン薬) 肥満+抵抗性が高い
糖新生抑制効果が強い
ビグアナイド薬 メトグルコR、メデットR、グリコランR、ジベトスR、ネルビスR 肥満+抵抗性が高い
DPP-4阻害薬
単独投与では低血糖リスク低い
ブドウ糖濃度依存型
SU薬 インスリンを分泌する力がある
グリニド薬・食後高血糖 SU薬より作用出現早く、持続時間短い
(上記5種は2型糖尿病患者のみ)
α-GI薬 食事由来の糖質分解と吸収の抑制
SGLT2阻害薬 ブドウ糖再吸収抑制
(α-GIとSGLT2は1型・2型共に適応あり)

 

インスリン注射

経口血糖降下薬で十分な血糖コントロールが得られない場合は、インスリン注射を行います。糖尿病患者はすい臓のインスリン分泌能力が低下している。そのため、インスリン基礎分泌や追加分泌が低下し、空腹時や食後の血糖値が上昇してしまいます。インスリン注射で足りない分のインスリンを注射して体内に入れる事で血糖を降下させます。インスリン注射には、注射後効果が現れるまでの時間と効果が持続する時間の違いによって、以下のような特徴があります。

超速効型
(10-20分で作用出現。30分~1.5時間で効果はピークとなり、3~5時間血糖降下作用持続)
速効型
(30-60分で作用出現。2-3時間で効果はピークとなり、6~8時間血糖降下作用持続)
中間型
(30-90分で作用出現。8-12時間で効果はピークとなり、18-24時間血糖降下作用持続)
持効型
(明らかなピークはなく、24時間以上血糖降下作用持続)

※インスリン製剤の種類によって作用発現時間や作用持続時間は異なります。

 

 

 

 

 

 

 

 

リスキミア受容体作動薬

下部消化管より分泌されるリスキミア(「GLP-1」とは、インクレチンという、インスリン分泌を助けるホルモン)の受容体を活性化する注射です。
食事療法・運動療法によっても十分な血糖コントロールが得られないインスリン非依存状態(2型糖尿病)の患者に使用します。1日1回注射のものから週1回のものまであります。

 

インスリン絶対適応(経口血糖降下薬を投与してはいけない状態)

  1. インスリン依存状態
  2. 重度の肝障害、腎障害
  3. 高血糖性の昏睡
    (糖尿病ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧症候群、乳酸アシドーシス)
  4. 重症感染症、重度の外傷、侵襲の大きい手術
  5. 糖尿病合併妊婦
  6. 高カロリー輸液

 

インスリンを打ち忘れた時      
自己判断で中止しないことが大切です。   重要です  
1型糖尿病の方は、中間型・持効型インスリンを      
自己判断で中止してはいけません      
ご不明な点がございましたら担当医に必ずご相談ください      

 

打ち忘れに気が付いた時

→食事中・食直後の場合
→持効型は指定量をただちに注射します
超速効やそれを含む混合型インスリンは食事中や食直後に思い出して注射しても大丈夫です。
食前に打ち忘れた時(中間型・持効型を除く)、一番安全なのはその回は無理して打たずに飛ばす事です。
1回の高血糖より低血糖の方が危険だからです。
速効型ではないインスリンは効き目があらわれるまで30分のタイムラグがあります。そのため、食後にインスリンを注射してしまうと、低血糖のリスクが大きくなります。

 

食事量でのインスリン量変更の目安

食事が全く食べられない時→いつものインスリン量1/2
(中間・持効型)
食事が半分以下しか食べられない時→いつものインスリン量

食事が半分以上食べることができた時→いつものインスリン量

 

血糖測定ができる方

血糖値が測定できる方は、食前に血糖値を測定して食後に注射
食前血糖値が100mg/dl以下で食事が半分以下しか食べられない時は、
インスリン中止して下さい

 

 

経口血糖降下薬
  服薬時間 忘れた時 食事量とのバランス 副作用
SU薬 食前・食直前
食直後・食後
食事中・食後30分以内
→直ちに内服
食後30分以降
→次回にスキップ
いつもの1/2  半量
いつもの1/3以下
→中止
低血糖
肥満傾向
二次無効
グリニド 食直前
(5-10分)
食事中
→直ちに内服
食後
→次回にスキップ
いつもの1/2  半量
いつもの1/3以下
→中止
低血糖
肝機能障害
α-GI 食直前 食事中・食後30分以内
→直ちに内服
食後30分以降
→次回にスキップ
いつもの2/3以上
→通常量
いつもの1/2以下
→中止
腹部膨満感
鼓腸
放屁
BG 食後30分 気が付いた時に内服 いつもの2/3以上
→通常量
いつもの1/2以下
→中止
乳酸アシドーシス
消化器症状
チアゾリジン 食前
食後30分
気が付いた時に内服 いつもの2/3以上
→通常量
いつもの1/2以下
→中止
浮腫・心不全
骨折・体重増加
DPP-4阻害薬 食前
食後30分
気が付いた時に内服 いつもの2/3以上
→通常量
いつもの1/2以下
→中止
消化器症状
SGLT2阻害薬 朝食後   いつもの2/3以上
→通常量
いつもの1/2以下
→中止
脱水・頻尿
尿路感染症

 

 

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