糖尿病療養指導コース 第6回
シックデイ
シックデイとは
糖尿病患者が感染症などで、発熱や下痢・吐き気や嘔吐などのために食事がとれなくなった状態をいいます
このような状態では、糖分の補給が通常より減ってしまい通常のインスリン量でも低血糖を起こすことが危惧されます。しかし、1型糖尿病やインスリン分泌が枯渇している2型糖尿病の場合、シックデイでは血糖値が上昇するので、食事ができないからといってインスリンを中止してはいけません。
また、内服薬のみの方も注意しなければならないことがあります。
このように特別なルールがあるのが、シックデイです。
シックデイルール
1.温かく、安静にする
体力の消耗を防ぎ、抵抗力も高めます。
2.早めに主治医と連絡をとる
症状が軽い時は1日程度様子をみてもかまいません。
しかし、下記の症状がある場合は迷わず主治医に連絡し、受診をするようにしてください。
- 全く食事が摂れない(24時間)
- 発熱38℃以上が2日続く時
- 消化器症状(腹痛・下痢・嘔吐・食欲不振)が半日以上続くとき
- 意識レベルの低下
- 高血糖が続く(350mg/dl以上)
- 薬やインスリンの量をどうしていいかわからない
3.食事・水分・電解質を摂る
発熱があったり食事が摂れないといった状態では、体に入ってくる水分より出ていく水分のほうが多くなり、「脱水」状態になりやすくなります。
▶水分
1000ml/日以上。みそ汁や野菜スープなどミネラルを含むものが望ましい
▶食事
できるだけ摂取しやすい形でエネルギー、炭水化物を補給する。1日100g以上の炭水化物を摂取することを目標にする。
→食べたい物や炭水化物を主体した消化吸収の良いものを中心にする。
4.症状チェックをこまめにする
自分の体調をしっかり把握しておき、注意する。
知っておきたいことは、「血糖値」「体温」「食事量」「自覚症状」です。
インスリン注射の場合
食前投与のインスリンもシックデイの時は食後打ち(食事量が不安定なため) |
持効型
食事量に関係なく通常のインスリン量を接種
超速攻型
食事量に応じてインスリン量を調整(食事量が不安定の場合、後打ち)し接種
混合・二相性
食事が通常の半分以上摂れれば、食事量に応じてインスリン量を調整
超速攻型インスリンの調整
食事がほとんど摂れない場合は、4時間おきに血糖測定。
血糖値が200mg/dl超なら、超速攻型インスリンをその都度2-4単位追加する。
混合型インスリンの調整
食事がほとんど摂れない場合は、6時間おきに血糖測定。
血糖値 | |
150mg/dl未満 | インスリン中止 |
150-250mg/dl | インスリン通常量半分 5単位まで |
250mg/dl以上 | インスリン通常量 最大10単位まで |
内服薬の場合
内服薬の場合、薬の種類によって、飲み方が異なります。 |
SU薬/グリニド薬
食事量が半分なら半分。少量の時は中止
α―GI・ビグアナイド薬 メトグルコR、メデットR、グリコランR、ジベトスR、ネルビスR・チアゾリジン薬・DPP-4阻害薬・リスキミア受容体作動薬・SGLT-2阻害薬
食欲低下(通常の半分以下)の時は中止
半分以上の食事が摂れて、水分も十分に摂れている場合→メトホルミン(ビグアナイド薬 メトグルコR、メデットR、グリコランR、ジベトスR、ネルビスR)のみ中止
低血糖の症状と対処方法
低血糖症状は血糖値が70mg/dl未満になると出現します。
重症になると中枢神経系の症状が現れます。
低血糖症状
は : はらがへる ひ : 冷や汗 ふ : ふるえ(手指振戦 へ : 変な行動(異常行動) ほ : ほっておくと昏睡・放置は昏睡 |
対処方法 |
飴は血糖値がすぐには上がらない
「は」「ひ」のうちにブドウ糖(なけれなショ糖)を口にする
ブドウ糖10-15g摂取し、15分経っても回復しない場合さらにブドウ糖を同量追加する。
もうすぐ食事だから、と我慢しているとより危険な状態に陥る可能性もあります。一時的に多少高血糖になったとしても低血糖状態を放置しておくよりずっと安全です。
(α-GI薬を内服している場合、必ずブドウ糖摂取して下さい。ブドウ糖でないと血糖が上がりません)
車の運転中、低血糖のような症状が出た場合は、路肩に寄せて停止
「ちょっと体調がよくないかな?」と思ったら、車は使わないようにしてください
低血糖はいつおこるかわかりません。 |
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